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 このまま眠ってしまおう…

琴子と喧嘩した・・・
いや、喧嘩というのは正しくない。


琴子が一方的に文句を言って、オレのひと言にぐうの音も出なくなって部屋に閉じこもっ
たってだけのこと・・・いつものパターンだ。

―琴子が文句を言い始めたのは、何が原因だったかな・・・
オレは、シャワーを浴びながら考えていた。
どこかへ一緒に行って欲しいと言われて、それをオレが断わったら、琴子が怒りはじめ
たんだ。


「どうせ、入江君は私のことなんてどうでもいいんだよね・・・もういいよ!!」
琴子の捨て台詞・・・
この後、階段を駆け上がって行って、激しく閉まるドアの音が聞こえてそのまま静かにな
った。大方、ベッドにもぐりこんで泣き寝入りってとこだろう。


まったく・・・結婚して何年経ってると思ってるんだ?
もういい加減、オレの性格もわかってくれていいと思うけど?

バスタオルで髪を拭きながら部屋のドアを開ける。
ダブルベッドの左半分が盛り上がって、頭から布団を被って琴子が眠っているのがわかる。

オレは、右側の布団の端を掴んでめくると、ベッドの上にあぐらをかいて座る。
こちらに背中を向けて静かに呼吸している琴子の顔を上から覗き込んでみる。


―あーあ、ほっぺたに涙の跡がついてるよ・・・


人差し指でそっと琴子の頬を撫でると、不意に琴子が寝返りを打ってこちら側を向いた。
「うーん・・・入江君のイジワル・・・」


―おいおい、いじめたつもりはないぞ・・・

琴子の寝言は、いつもオレが相手らしい・・・
ある意味、琴子をとても羨ましく思うことがある。
こいつは、いつでもどこでも・・・そう、夢の中でさえも好きな人と一緒で、笑って、キスして
喧嘩して、抱きしめて・・・本当に、ただただ大好きで・・・


まったく・・・夢の中でまでオレをひとり占めしてるってこと、わかってるのかな・・・

―でも、今琴子の夢の中にいる”オレ”はオレじゃない!
なんだか、妙な気分だ。

オレは、眠っている琴子の頬に唇を寄せた。
涙の味がするKissに、なんだかちょっと切ない気持ちになる。
琴子の頭の下に腕を通して抱き寄せる。


―このまま眠ってしまおう・・・

なんだか、今夜はお前を抱きしめたまま眠りたい。
せめて、夢の中のオレは素直に「好きだよ」って言えてるといいけど。
そして、明日の朝にはいつもみたいに笑ってくれよ・・・


―こうして抱きしめているだけで、オレの気持ちが全部お前に伝わればいいのにな・・・


お前が大好きだっていうこの気持ちが・・・


                                                    END



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