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 オレだけに出来ること

琴子のやつ・・・

最近、バイト先にも現れないと思ったら、とんでもない勘違いをしていやがる。

―まったく・・・どこをどうしたら、オレと松本が同棲してるって話になるんだ?

琴子の友達が、わざわざオレに文句を言いに来るほどだ、相当落ち込んでいる
んだろうな・・・
また勝手に盛り上がって、オレをあきらめようなんて思ってるんだろう。

裕樹の話では、飯も喉を通らないようだし、オフクロは、オレのせいだと決めて
かかっているらしい・・・


―いい迷惑だ。あいつが勝手に勘違いしてるだけなのに。

それなのに、オレは今、こうして大学の中を歩き回って琴子を探してる。
早く誤解を解いてやろうとしてる。
ちがう・・・オレが誤解を解きたいと思っているのかもしれない・・・
ところが、いつもなら頼まなくてもあいつの方からチョロチョロと現れるのに、
こうしていざ探そうと思うと、一向に見つからないから不思議だ。


保育科の教室にも行った。
学生食堂にも行った。
テニス部ものぞいた。
万が一にもと思って、図書室にも行ってみた。
でも、あいつの影も形もない・・・

あと、琴子の行きそうなところってどこだ?
もうすぐ、松本の妹と待ち合わせをした時間になってしまう。

もう、家に帰ったのか?
それとも、学校にすら来ていないのか?
今日は、あきらめるかな・・・

まったくバカな勘違いだ。
それでも、琴子が今その勘違いを信じているのなら、どんな顔をしているかさえ
想像できる。
オレがまったく相手にしなくても、あいつがずっとオレを好きでいるのは、オレが
琴子を含めて他の誰にもなびかないからなんだ。
そして、オレを好きでいることが、あいつのエネルギーなんだ。

わかってるさ・・・

―じゃあもし、オレが誰か違う女を好きなったりしたら琴子はどうなるんだろう?・・・




オレは、琴子を探すのをあきらめて、松本の妹と待ち合わせをした場所へと向かった。
サッカーグランドの前のベンチへ・・・

―ん?あれは・・・

オレは、一瞬吹き出しそうになった。
まさに、その待ち合わせ場所のベンチに琴子が座っていた。
想像した通りの浮かない顔をして、なぜかあたりを見回している。
オレは、少し浮き浮きした気分で、琴子に向かって歩き出した。


見てろよ・・・今から五分後には、あいつに笑顔が戻る。

誤解が解けて、あいつの心が息を吹き返す。

確信をもって言えることさ。


今、琴子を笑顔に出来るのはオレだけ・・・
これは、これだけは、他の奴には絶対に出来ない、オレにしか出来ないことだから・・・



                                          END


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