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 ひとりの夜・・・ 

静かな夜・・・
食事も風呂も済ませて、パソコンのモニターに映った資料を読んでいたオレの手元で携帯
が振動する。メール着信のランプが点滅するのを、ため息交じりに開けば、夜勤で病院に
いる琴子からのメール・・・

<入江君、まだ起きてる?今夜はやけに急患が多くて、もうこの後はメールできそうにない
から今のうちに、おやすみメールしておくね・・・入江君がいないから寂しいな・・・おやすみ
なさい、入江君。大好き♪>

オレは、ふっと笑いながら<がんばれよ>と、ひとことメールを返す。
急患が多いという言葉が少し気になって様子を聞こうかとも思ったが、もしオレの手が必要
なら琴子ではなく病院から直接連絡が来るだろうと思いなおして携帯を傍らに置いた。

琴子がひとりいないだけで、この家は驚くほどにシンと静まり返る。
それでも夜勤のたびに、暇さえあれば送られてくる琴子からのメールも今夜はもう来ない
らしい・・・

オレは、パソコンの電源を落とし部屋の電気を消してベッドに寝ころんだ。
頭の後ろに両手をまわして天井を見上げる。
いつもの癖でつけたままのナイトスタンドの明かりが、ぼんやりとした影を部屋の壁に映し
出している。

―あいつ、ちゃんとやってるかな・・・

ひとりで寝るには広すぎるベッドには、オレを一番癒してくれるぬくもりが今夜はない。
きっと1年に数度あるかないかの清々した夜のはずなのに不覚にも寂しさを感じている自
分に苦笑いが浮かぶ。

―まったく・・・オレも相当だよな・・・

まとわりついていれば鬱陶しそうにもできるのに、そばにいなければ、たった一夜のことな
のに顔を見たくなる。

あまのじゃくなのは今に始まったことじゃない。
そんなことは十分にわかってる。

―でも琴子・・・やっぱりお前を抱きしめて眠りたい・・・


                                            END


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