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 夢で逢いましょう

ねえ、入江君が夢に出てきてくれたらいいんだけどな・・・


琴子の告白は、いつもオレの想像を遥かに超える。


泊りが続いて着替えを取りに帰った夜、疲れきって眠っている琴子はまるで寒がりの
子猫のようにベッドの上で体を丸めて小さな寝息を立てていた。


むやみに起こす必要はないことはわかってる。
どうせ琴子はオレは病院にいるんだと思っているのだから・・・


でも・・・夕方、別れ際に交わした会話が蘇る。


寂しくてもいいから、すぐそばにいなくてもいいから、せめて夢で逢いましょう・・・
まるでちょっと哀しいラブソングを口ずさむように琴子がつぶやく。
入江君が夢に出てきてくれたらいいんだけどな・・・


オレは足音を忍ばせて、琴子に近づく。
枕に押し付けた顔を覗き込めば、無意識に延びた手が頬にかかった髪をかきあげる。


琴子?・・・琴子・・・


薄っすらと目を開けた琴子が焦点の合わない目でオレを見つける。


お前の夢の中に逢いに来たよ・・・
オレは少し照れながら、寝ぼけ顔の琴子にくちづける。


ゆっくりと背中を擦れば、再び静かな寝息をたて始めたその瞼にもう一度キスをして、
オレは立ち上がる。


なんだか立ち去りがたくて、戻ってきたことを少し後悔する。
部屋を出る間際に、もう一度振り返れば、琴子の寝顔にかすかに浮かんだ微笑みが、
オレを幸福にする。


いい夢を・・・おやすみ、琴子。


明日の琴子の報告を楽しみに、オレは後ろ手にドアを閉めた。


                                          END


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